大葉子[オオバコ] Plantago asiatica L.
別名:大葉子[オンバコ/オバコ]、丸子葉[マルコバ]、蛙葉[カエルッパ/ギャーロッパ/ゲェーロッパ]、野良胡麻[ノラゴマ]、相撲取り草[スモウトリグサ]、引き合い[ヒキアイ]
オオバコ科オオバコ属の多年草。日本、朝鮮半島、中国に分布。
踏まれても踏まれても立ち上がる路傍の小さな草。
春から秋にかけて10〜20cmの花茎を立てて、白い花を沢山咲かせます。先に糸のような雌しべが出て、遅れて先端に塊の付いた雄しべが出ます。小さいので、緑の穂の先に白い粉を散りばめたよう。終わった花は茶色くなりますが、オレンジ色の粉を散りばめたように見え、白い穂の色違いのようで面白い。金と銀、という感じ。下から咲いていくので、上半分は白く下半分はオレンジという状態も。
花の後に小さなアーモンド型の硬い実がぎっしり付いた穂になります。熟すと、実は真ん中から横真っ二つに割れ、中から2、3mmの小さな種が、一つの実から4〜8個ずつ こぼれ出ます。この種子の形が胡麻に似ているというので「ノラゴマ」の別名があります。空煎りして胡麻の代用品として使うこともできますが、格別風味がいいわけでもないらしい。後述しますが、この種子は漢方薬「車前子」としても使われます。
若葉は普通に野菜として食べられます。
ただ、時期を過ぎると硬く筋張った草になるので美味しくありません。
オオバコの名の由来はそのまんま、「大きな葉」だから。
なお、属名を示す学名「Plantago[プランターゴ]」はラテン語「planta(足跡)」に因み、一説に、大きな葉を足跡に見立ててのこと。ただし別説もあり、踏まれた足跡から増えて行く草だから、と解説されることもあります。
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中国名は「車前草」で、漢方生薬としての名もそれ。葉は「車前葉」、種子は「車前子」。
この名は、踏まれても踏まれても生える、車に踏まれても道に生え続けることに因みます。中国での別名「牛遺」「當道」「馬舃」も、牛や馬を引いて通る道に生えることから。
花期に全草を採って干した「車前草」を、煎じて食間に服用。下痢止め、咳止め、止血、利尿、強壮剤とします。
秋に集めた種子を乾燥させた「車前子」は、布か紙の袋に入れて煎じ、咳止めとして服用します。トロっとして少し飲みにくいので、甘草などで甘味を付けるとよいそうな。
オオバコ種子の外皮には粘性があります。雨などに濡れるとねばつき、通りかかった人や動物にくっつく。こうして繁殖範囲を広げ、人や牛馬の通る道に多く生えて行くという仕掛け。
この粘質、生薬の世界では意外にお役立ちらしい。
ヨーロッパ〜西アジア原産でインドやイランで栽培されているオオバコ属「デザート・インディアンホイート(Plantago ovata)」の種子(ブロンドサイリウム)は特に粘質が多く、果皮を粉末にしたものを大量の水と共に服用すると、三十倍に膨張してゼラチン状になり、腸内の潤滑剤・吸収抑制の役を果たします。便秘・下痢症の改善、血糖値の改善、コレステロール値の低下に効果があることが臨床確認されているそうです。
さて。別名の中に「カエルッパ」だの「ギャーロッパ」だの、「蛙葉」を意味する一群があって目を引きます。
一説に、縦筋があって丸い葉の形が蛙の背中に似ているからだそうで。
確かに、ちょっと似てるかも?
中国での別名に「蝦蟇衣」とあり、同じ由来なのかと思いきや、『本草綱目』によると「蝦蟇がその葉の下に隠れ伏すから」とのこと。
ところが、『九州の薬草』(高橋貞夫/葦書房/1986.)という本にもっと面白いことが書いてありました。
地方によってカエルッパというのは蛙が死んだのを広いこの葉で包んでおくと生き返るといういい伝えから。
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これだけの記述ですが、なんだか心惹かれる言い伝えです。
子供の頃、この花の茎を絡ませて引っ張り合う草相撲に夢中でした。
別名の「スモウトリグサ」「ヒキアイ」は、この遊びに因みます。
茎が強くて遊びやすいんですよね。
花茎の中の導管がとても強くて、白い糸のように引き出すことができるんです。何故かその作業が大好きで、よくやってました。長いこと、私の中で「好きな草ランキング」上位をキープ。子供って何を好くのか分かんないですね。
オオバコ属の花言葉
足跡を残す
耐え忍ぶ愛
崇高
踏まれて殖えていく特質に因んだ言葉のようですね。
次に、大きなオオバコ。
西洋大葉子[セイヨウオオバコ] Plantago major
別名:鬼大葉子[オニオオバコ]
オオバコ科オオバコ属の多年草。ヨーロッパ〜北アフリカ原産で、ユーラシア大陸に広く分布。帰化植物。
草丈30〜60cmに達し、オオバコよりぐぐっと大きい。一つの実の中に種子が8〜16個入っています。
よく似ていて海辺に生える「唐大葉子[トウオオバコ]」は、分類上セイヨウオオバコの変種です。ただ、セイヨウオオバコが(名前の通り)外来種であるのに対し、トウオオバコは(名前に反して)日本在来種。
トウオオバコの中国名は「大車前」で、漢方生薬としては車前草と同様に用います。
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基礎生物学研究所の石川直子研究員、山形大学の横山潤教授、東京大学の塚谷裕一教授らの研究グループによれば、遺伝子解析の結果、日本在来のオオバコがセイヨウオオバコと未知の種の雑種を起源とすると判明したそうです。遠い昔、ユーラシア大陸で生まれた雑種が長い時を経て日本に渡っていたということでしょうか。
■オオバコの仲間は雑種だらけ
〜日本古来のオオバコは、大陸産のセイヨウオオバコの雑種から生じた〜(基礎生物学研究所プレスリリース)
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セイヨウオオバコの花言葉
白人の足跡
「白人の足跡」は普通のオオバコの花言葉として紹介されていることが多いですが、由来を見るにセイヨウオオバコの花言葉と限定する方が相応しいと思いました。
オオバコ属は踏まれることで人や獣の足に種子をくっつけ伝播されていく。アメリカ大陸に白人の移住者たちがやって来た時、彼らの通った後にセイヨウオオバコも広がっていった。それで、ネイティブアメリカンたちが「白人の足跡」と呼んだのだそうです。
花穂が派手なオオバコ。
箆大葉子[ヘラオオバコ] Plantago lanceolata
別名:英吉利大葉子[イギリスオオバコ]
オオバコ科オオバコ属の一年草。ヨーロッパ原産で、日本には幕末に帰化したと言われます。
セイヨウオオバコより更にぐぐぐっと大きい。小さいと草丈20cm程度で普通のオオバコと変わらない大きさですが、育てば60〜80cmくらいの大株になります。
そうなると、普通のオオバコとは似ても似つきません。初めて見つけた時は何かの園芸品種かと思いました。まさか雑草で、しかもオオバコだとは。
花期は6、7月。
普通のオオバコと同じように、まず糸のような雌しべが出て、次に先端に塊の付いた雄しべが追う。下から咲いて上にあがっていく。花穂に対して雄しべが大きいので、白い飾りが茶色い棒を輪のように取り囲んでいるように見えて愛らしいです。
ヘラオオバコという名の由来は、葉の形が他のオオバコより細長く、箆[へら]型をしているから。
中国名は長葉車前。
ヘラオオバコの花言葉
素直な心
惑わせないで
花穂が硬い感じのオオバコ。
蕾大葉子[ツボミオオバコ] Plantago virginica
別名:立ち大葉子[タチオオバコ]
オオバコ科オオバコ属の越年草。花期は5〜8月。
草丈は10〜30cmで、オオバコとセイヨウオオバコの中間くらいの大きさ。
北アメリカからの帰化植物。日本では大正初期(1913年)に発見されたのが最初の報告で、日本全国に分布します。
見た目の特徴は、なんと言っても硬そうな花穂。曲がりくねらずに直立します。別名の「タチオオバコ」はここからでしょうか。
オレンジ色の花冠がツンツン尖ってちょっとだけ出ている点も「硬そう」というイメージを後押しします。
こうした花穂の様子から、「いつまでも硬い蕾のままのように見える」ので「ツボミ」オオバコと名付けられた、とされています。
しかし実際には、花はちゃんと開きます。
ちなみに、葯(雄しべの先端)が淡紫色で、オオバコとは印象が異なっていたり。
他には以下のような特徴があります。
・無毛のオオバコに対し、茎や葉が毛深い
・茎や葉の色がオオバコに比べて明るい黄緑色
・葉がオオバコに比べて小さい。スプーン型のオオバコに対し、ヘラ型。
ツボミオオバコ固有の花言葉はなく、オオバコ属の花言葉が適用されるようです。
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